中小建設業専門の経営コンサルタント長野研一です。
本日は、去る2025年3月22日(土)に東京・神田の「ちよだプラットフォームスクエア」で開催した共著書『KPI監査』出版記念セミナーについてご報告するとともに、私自身が今後どのように「KPI経営」を実践していくのかをお伝えいたします。
セミナーは“実践知の交差点”でした
当日は、会場参加10名、オンライン参加35名、合計45名の皆さまにご参加いただき、活気あるセミナーとなりました。
冒頭は、本書の主著者である嶋田利広先生による講演で幕を開けました。KPI監査という手法の背景、そして従来のKPI活用とは一線を画す視点について、理論と経験を交えて語っていただきました。
その後は、共著者3名による事例発表。いずれも内容もスタイルも異なる、まさに“三者三様”の実践が披露されました。これは、あえてそうなるように意図した構成で、KPI監査の多様な活用法を浮かび上がらせる狙いがありました。
私の発表:数字の裏にある「問い」と「壁」
私の発表では、建設会社の事例紹介をしつつも、具体的な数値や取り組み内容よりも、「どんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えたか」を中心にお話ししました。
たとえば、事例となった建設会社では、私の問いかけに対して、社長は当初、言葉少なで慎重なご様子でした。ところが、対話を重ねていくうちに、現場の実態や社内の葛藤といった濃いファクトが次第に明らかになっていきました。やがて社長は、「この議論、うちの工務の連中にもぜひ聞かせたいなあ」と、笑顔を浮かべながら語ってくださり、その変化がとても印象的でした。
KPI監査は単なる“数字の管理”ではありません。むしろ、経営者の頭の中にある「感覚」や「直感」を言語化し、行動に落とし込んでいく営みです。私の発表は、そうしたプロセスを“ドキュメンタリー風”に描くことを意識しました。
他の共著者の発表から学ぶ多様性
税理士の奥山和弘先生は、建物解体業を対象に、フレームワークを活用した分析を展開され、導き出された積極戦略の意義を論理的に説明されました。経営指導の「構造化力」を感じさせる、安定感のあるプレゼンでした。
一方、温泉ホテル経営者の早川善輝さんは、経営者としての苦悩と試行錯誤を率直に語られたあと、「長年探し続けていた“目標に近づくための道筋”が、このKPI体系図に描かれている」と話され、会場の空気が一気に引き締まりました。経営の現場で実際に使い、自らモニタリングしたからこその迫力と説得力がありました。
KPIは“目新しい指標”ではありません。しかし…
ここで大切な前提を共有しておきます。KPI(重要業績評価指標)という言葉自体は、目新しいものではありません。多くの経営者が、すでに売上や利益、案件数といったKPIを意識して経営されています。
しかし、私たちが目指す「KPI経営」には、それらとは一線を画す明確な違いがあります。
それは、KPIを“結果”ではなく“行動”として捉えること。しかも、できる限り細かく具体的に数値化することです。
たとえば、「売上1,000万円を達成する」というのはKGI(最終目標)です。これをKPIとしてしまうと、「で、何をすればいいのか?」が見えにくくなります。私たちは、そこをあえて分けて考えます。
KGI:売上1,000万円増
KPI:訪問件数を週10件に増やす、新規見込み客との面談を週3件設定する、提案書提出数を月8件にする……
このように、具体的な行動レベルにまで落とし込んでこそ、KPIは現場で“機能”するのです。
なぜ細かくする必要があるのか?
「もっと細かく、もっと具体的に」。
それは、“行動に移せるKPI”にするためです。
KPIが抽象的すぎると、何をどう行動すればよいのかがわからず、結局動けなくなってしまいます。逆に、具体的な行動が見えていれば、現場は判断と行動がしやすくなり、改善のスピードが格段に上がります。
たとえば、ある企業では「受注率を改善する」という曖昧な目標が掲げられていました。これをKPI監査で分解すると、最終的に「提案時に“予算感をヒアリングする”という営業プロセスを必ず挟む」という行動にたどり着きました。この一点を徹底するだけで、受注率は大きく改善しました。
私自身も、KPI経営を始めます
この出版とセミナーを機に、私自身も「KPI経営」をスタートします。
「自分を救えない者が、人を救うことはできない」
この言葉を信条に、自らが行動を数値化し、言い訳のできないPDCAをまわす覚悟です。
具体的には、以下のようなKPIを設定します。
電子書籍を四半期ごとに1冊ずつ刊行
ブログ投稿を週1回から週2回に
セミナーを年4回以上自主開催
SNS発信を週1回以上
- 会員コミュニティの立ち上げと月1回以上の会員向け情報発信
これらをKPI体系に整理し、「自分の活動プロセス」を可視化します。経営者の皆さまと同じ立場で、実践者として行動していく所存です。
終わりに:KPIは“行動”の地図
KPIとは、「何をしたら成果につながるか」を示す“行動の地図”です。
その地図を描く力は、これからの中小企業にとってますます重要になると確信しています。
建設業は、チームワークと現場力がものを言う業界です。だからこそ、「言わなくてもわかる」ではなく、「具体的に行動がわかる」KPI設計が、組織の力を引き出します。
今回の出版とセミナーを通じて、その思いはより一層強くなりました。
これからも私は、経営者のそばで、数字と現場のつながりを“見える化”する伴走者でありたいと思っています。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。