中小建設業専門の経営コンサルタント、長野研一です。
第四週は、中小建設業の現場改善についてお話しします。生産性向上や効率化の具体的な事例を紹介するシリーズの第3回となる今回は、「職長さんとのコミュニケーション」についてお伝えします。
なぜ日程管理がうまくいかないのか?
現場で職長が「天候のせいで遅れました」と報告してくる背景には、いくつかの共通する問題があります。
ざっくりとした全体工程表しかなく、日々の作業目標が曖昧
工程の“節目”が意識されておらず、遅れに気づくのが遅い
予備日(バッファ)を設けておらず、天候不順が即・遅延に直結
他業者との段取り調整が後手に回っている
「工期はなんとかなるだろう」という楽観的な空気がある
このような状態では、工程全体が見通せず、結果として納期遅れやコスト増につながります。ですが、職長に対して「ちゃんとやれ」と一方的に言うのでは、現場の雰囲気は悪くなってしまいます。
職長のやる気を引き出す「よりよいやり方」の提案
① 簡易マイルストーン管理の導入
全体の工程表に加え、「今週中にここまで終わっていれば順調」という中間ゴールを決めましょう。
たとえば、
今週金曜までに基礎コンクリート打設完了
来週水曜までに型枠解体と次工程準備完了
こういった節目をA3一枚にまとめ、ホワイトボードやLINEグループで現場共有します。たったこれだけでも、「今どの段階か」が感覚的にわかるようになります。
② 雨天時の“作業B案”を事前に準備
「外構ができないなら内部の墨出し」「資材仕分けや材料チェック」など、雨天時にできる作業を事前に決めておけば、工事の流れは止まりません。職長と一緒に考えることで、判断力や段取り力も育ちます。
③ KPIを導入し、工程を“自分ごと”にする
「平米あたり施工単価」「1人1日あたりの施工量」などを現場単位で設定し、見える化していくと、職長は“数字で評価される”ことに興味を持ち始めます。
「前回の現場で12㎡/人・日を達成した。今回もその水準を維持しよう」 といった具体的な目標ができれば、工程管理は“自分の成果”として意識されていきます。
NLP的視点から見るコミュニケーションの工夫
社長と職長の違いを理解する
社長は目標志向・視覚優位タイプ(Vタイプ)
数字や成果で納得する
「見える化」や「ロジック」での説明に強く反応する
職長は現在志向・身体感覚優位タイプ(Kタイプ)
感覚や経験を重視
自分で工夫したり、体験から学ぶことにやりがいを感じる
この2人の“ものの見方”が違うことを理解したうえで、伝え方を変えるだけで驚くほど現場は変わります。
トークスクリプト:実例
社長:「◯◯さん、ようやってくれよるなあ。現場のことは任せて安心しちょるけんな」
職長:「いやいや社長、天気ばっかりはどうしようもねえけん…」
社長:「そこちゃ。天気に振り回されるのは、どの現場も一緒なんよ。けど、他の現場で面白りいやり方しちょったけん、ちょっと聞いちょくれ」
職長:「どげなやり方ですか?」
社長:「例えばな、1週間の終わりに『ここまで終わっときたい』っちゅう“通過点”を最初に決めちょくんよ。そしたら、毎日ちょっと遅れちょるとか、よう進んじょるとか、感覚的にも分かりやすいっち。遅れにも早めに手が打てるやろ?」
職長:「社長、俺、そのくらいの管理はしよんで」(少しむっとしている)
社長:「うん、◯◯さんが現場の流れを考えて、ちゃんと日程を組んでくれよんのは分かっちょんよ。」(彼の管理の仕方では足りないのだが、職長の言い分を否定しない)
社長:「そのうえで、もし“今週ここまで終わろうや”ってのを、常用の人も含めてな、職人さん全員と共有できたら、もっと段取りが楽になると思うんや。」「俺も最近、元請けさんに現場の進み具合を急に聞かれることが増えてな、週ごとの目安がはっきりしちょんと、すぐに答えられるんや。」「やけん、こっちが“外に説明する材料”としても、共有しちょきてえんよ。」(職長にとって“頼りにされている”実感を持たせる言い方)
社長:「そうそう。それに、あらかじめ“天気悪かったらこの作業やろう”っち、職長さんと一緒にBプランも立てとくと、バタバタせんで済むけん。工事の流れが止まらんのよ」
職長:「それは…現場が楽になるかんしれんな」
社長:「別に難しいことは言わんちゃ。とりあえず今週だけ、“週末ゴール”を決めてやってみようや。あんたの段取り力に期待しちょるで」
まとめ:まずは「週単位のゴール設定」から始めよう
工程管理を教科書通りに完璧にこなすのは、現実の中小建設業では困難です。だからこそ、まずは「週ごとの進捗チェック」と「雨天時のB案」から始めてみるのが実務的です。
これができてくれば、KPIによる成果管理にも自然と移行できます。大切なのは、“職長が自分で動きたくなるような工夫”を仕掛けること。現場に合ったやり方で、現場力を少しずつ高めていきましょう。