建設会社の営業部隊のパフォーマンスを上げるには

〜「それは営業の仕事ではない」「それは工務の仕事ではない」を超えて〜

中小建設業専門の経営コンサルタント、長野研一です。毎月第三週は、建設会社の営業をテーマに綴っていきます。

建設業における営業の役割は、単に契約を取ることだけではありません。営業から施工完了まで一貫して担当してもらえることで、お客様に安心感を与えることができるため、施工の現場とも密接に関わる必要があります。

しかし、現場に近づけば近づくほど、「それは営業の仕事ではない」「それは工務の仕事ではない」という言葉が飛び交うようになります。営業と工務、それぞれの担当者が自分の職務領域を認識しているつもりでも、実際にはズレが生じ、結果として「誰がやるのか」という問題が先に立ってしまう。こうした状況では、着工直前になって慌ただしく準備を進めることになり、トラブルにつながるリスクが高まります。

このような問題を解消し、営業部隊のパフォーマンスを向上させるには、「営業と工務の仕事の境界線」を見直し、明確な役割分担を整えることが重要です。本記事では、建設会社の営業のパフォーマンスを上げるための具体的な取り組みについて解説します。


1. 営業と工務の役割の境界を見直す

「それは営業の仕事ではない」「それは工務の仕事ではない」はどこから生まれるのか

わが国の大多数の会社では、「仕事に人を張り付ける」のではなく、「人に仕事を割り当てる」という考え方が強い傾向があります。そのため、営業、工務といった職務領域ごとに担当者が割り当てられるのは当然の流れですが、問題はその担当者の職務認識と実際に張り付けられるタスクにズレが生じることです。

営業は「契約を取るまでが仕事」、工務は「施工管理が仕事」という考えが強いと、「この作業は営業がやるべきなのか?それとも工務がやるべきなのか?」という迷いが生じ、結果として誰も手をつけないまま着工直前で慌てることになります。

この問題を解決するために、まずは「営業と工務の役割の明確化」を進めることが重要です。


2. 営業のパフォーマンスを上げるための3つのステップ

(1) 小型案件・大型案件ごとに「やらなければならないことチェックリスト」を作成する

営業と工務の役割を整理する際に、「誰がやるべきか?」という議論から入ると、どうしても部門間の対立が生まれやすくなります。そこで、まずは「やらなければならないこと」を整理することから始めます。

【小型案件のチェックリスト】

  • お客様との最終確認(仕様、納期、現場条件)
  • 材料・部材の手配状況
  • 近隣対応(事前挨拶など)
  • 工程表の作成・共有
  • 必要な許可・申請の有無

【大型案件のチェックリスト】

  • 設計図面の最終確認
  • 製作工程の進捗状況確認
  • 施工計画書の作成・承認
  • 品質管理計画の作成
  • 工事リスク評価

こうしたチェックリストを作成し、営業と工務で「何が完了していて、何がまだ手つかずなのか」を明確にすることで、着工直前に慌ただしくなる状況を防ぐことができます。


(2) 営業と工務のタスクを明確に分担する

チェックリストができたら、次に「どの業務が営業・工務のどちらに適しているか」を整理します。ここで重要なのは、「最初から営業・工務の仕事を分けようとしないこと」です。まずは「やらなければならないこと」をリストアップし、その中で専門知識を要しない業務や営業が対応しやすいものを切り分けていきます。

【チェックリストの一例】

・施工図・製作図が確定し、工務および協力業者と共有されているか

・施工方法や納まりの確認が済んでいるか

・使用する建材・機器の仕様が最終決定されているか

・必要な材料・設備の発注が完了しているか

・工場製作がある場合、そのスケジュールが確定し、搬入日が調整されているか

ここで、「営業が対応しやすい業務」「工務が対応しやすい業務」を仕分けし、最終的に業務分担を明確にするのが理想です。

【営業が比較的対応しやすい業務】

  • お客様との最終確認(仕様・納期・支払い条件)
  • 契約書・発注書の整備
  • 近隣対応(必要なら事前挨拶)
  • 工程表の初期作成
  • 簡単な進捗管理

【工務が担当することが望ましい業務】

  • 施工計画の作成
  • 安全対策の計画と実施
  • 施工上の技術的な問題の解決
  • 品質管理の計画・実施
  • 実際の現場管理

このように、「誰が担当するか」の議論に入る前に、「やらなければならないこと」を明確にすることが先決です。そうすることで、着工直前に慌てることなく、営業と工務がスムーズに連携できるようになります。


(3) 営業に施工の基礎知識を身につけさせる

営業が施工に関する知識を持っていないと、お客様の質問に即答できず、信頼を失う場面が増えます。また、工務との連携がスムーズに進まない原因にもなります。そのため、営業には最低限の施工知識を身につけさせることが必要です。

【営業が学ぶべき施工知識】

  • 基本的な工事の流れ(着工前→施工→引き渡し)
  • 主要な建材の特性
  • よくある施工トラブルと回避策
  • 工期遅延の原因と対応策

この程度の知識を持っているだけでも、営業の対応力が格段に向上し、顧客満足度の向上にもつながるのです。


3. まとめ:営業と工務の連携を強化することが成長の鍵

営業部隊のパフォーマンスを向上させるには、「営業 vs. 工務」という対立構造をなくし、チームとして機能することが重要です。そのために、

  1. まず「やらなければならないことチェックリスト」を作成し、業務の可視化を行う
  2. 営業と工務のタスクを整理し、役割を明確にする
  3. 営業にも施工の基礎知識を学ばせ、工務との連携を強化する

この3つのステップを実践することで、営業部隊の負担を軽減し、受注率の向上、さらには会社全体の成長につながります。

「営業と工務の壁」を乗り越え、チーム全体で成果を出すことが、これからの建設会社に求は求められています。