その会社なりの現場管理の改善を進めよう ― 教科書通りではない現実的な管理の仕組みとは? ―

中小建設業専門の経営コンサルタント、長野研一です。
第四週は、中小建設業の現場改善についてお話しします。生産性向上や効率化の具体的な事例を紹介するシリーズの第2回となる今回は、「その会社なりの原価管理」についてお伝えします。


なぜ現場改善は教科書通りにできないのか?

「正しい現場管理の仕方」は、原価管理の教科書を読めばわかります。しかし、実際の現場はそんなに単純ではありません。

① 現場は常に変化する

建設現場は、予定通りに進むことのほうが珍しいものです。天候が変われば作業が遅れ、職人の動き一つで工程はズレます。資材の搬入が遅れれば、職人の手が空く時間が発生し、結果的にコストが増えることになります。発注者の設計変更が入ることも日常茶飯事です。こうした変動の中で、マニュアル通りの管理が機能しないのは当然です。

② 限られた人員と時間

中小建設会社では、現場代理人や工務担当者が複数の現場を担当していることが多く、大手企業のように人材の層に厚みがありません。現場管理には慣れているがデスクワークは苦手だったり、その反対だったりするケースもしばしばで、現場管理の「ついで」に原価を見ようとしても、細かい分析にまで手が回らないのが実情です。

③ 原価管理の意識が統一されていない

原価管理の重要性は経営者なら理解しているでしょう。しかし、現場の職人や代理人にとっては「決められた工程を進めること」が第一であり、原価のことまで意識が向いていないことも少なくありません。この意識のズレが、管理の形骸化を生み出してしまうのです。


30点主義での改善事例:ある会社の取り組み

「それなら、うちの会社でもできる現場管理の改善策はないのか?」と思った方に、実際に現場改善を進めた会社の事例を紹介します。

ある建設会社では、原価管理に関する仕組みがほとんどなく、現場ごとのコストが見えていませんでした。経営者に「実行予算はどうやって決めていますか?」と尋ねると、「公共工事の標準単価をそのまま参考にしている」との答えが返ってきました。しかし、標準単価はあくまで発注者が想定するコストであり、実際の工事でどれだけの利益が出るのかはまったく別の話です。

また別のある会社の現場では、資材が余ることが常態化していました。たとえば、鉄筋や型枠材が常に数%ずつ余り、最終的には倉庫に山積みになるか、廃棄されることが多かったのです。発注担当者は必要数そのまま、あるいは「余るよりは足りないほうが怖い」と考え、必要数よりも若干多めに資材を発注していたのです。

私は、いきなり完璧な原価管理を求めるのではなく、「まずは30点主義でやってみましょう」と提案しました。その第一歩として、資材発注の際に実行予算の95%だけを先に手配し、不足分は後から発注するというルールを導入しました。

実際に試してみると、資材が適正に使われるようになり、余剰在庫が大幅に減少。さらに、余裕を持った資材管理のおかげで、施工中に気づいた細かな調整もしやすくなりました。

また別の会社では「出面表(職人の出勤記録)を施工管理に活用する」というステップへ進みました。それまで出面表は単なる勤怠記録としてしか使われていませんでしたが、職長と経営者が面談しながらチェックし、進捗管理に活かすようにしました。その結果、全体の施工効率が向上し、外注依存率も低下しました。


「平米あたり施工単価」と「作業者一人当たりの施工量」をKPIにする

この会社では、次のステップとして「平米あたり施工単価」と「作業者一人当たりの一日施工量」をKPI(業績評価のものさし)として設定しました。これにより、各現場ごとに施工効率を数値で把握し、改善につなげることができるようになりました。

職長からは「この施工量の達成は難しい」という声が出ても、経営者が一緒に施工スピードを上げる手立てを考え、指示を与えられるようになったのです。


まとめ:その会社なりの改善を進めよう

建設業の現場管理は、教科書通りにはいきません。しかし、「だから無理だ」と諦めるのではなく、その会社なりのやり方で、少しずつ改善を積み重ねることが重要です。

まずは、30点主義で「できるところから」改善を始める。そして、成功体験を積み重ねながら、50点、60点と段階的にレベルアップしていく。そうすれば、無理なく現場管理を改善でき、経営の安定化にもつながります。

「最初の一歩」を踏み出すことが、最終的に大きな成果を生むのです。あなたの会社でも、まずは小さな一歩から踏み出してみませんか?