現場と事務部門の連携が生む生産性向上の秘訣

中小建設業専門の経営コンサルタント長野研一です。

第四週は、中小建設業の現場改善について綴ります。生産性向上や効率化の具体的な事例を紹介します。その第1回となる今回は、現場と経理など事務部門のつながりの大切さについて書きます。


はじめに:なぜ現場改善に事務部門が重要なのか

現場改善の話題を聞くと、多くの方は現場作業員のスキル向上や作業工程の効率化を想像するかもしれません。しかし、それだけでは片手落ちです。現場での業務改善が進んでも、事務部門との連携が不十分では真の効率化や利益率の向上は実現しません。

例えば、追加工事が発生した際、現場から事務部門への報告が遅れるとどうなるでしょうか。請求書への反映ができず、結果として原価に見合った売上が立たなくなります。このような事例は、現場と事務部門の連携不足が企業全体の利益に影響を与える典型例です。

現場改善を進める上で事務部門に目を向ける理由はここにあります。「現場」と「事務部門」という別々の歯車が互いにかみ合うことで、初めて企業の生産性や収益性が最大化されるのです。


現場と事務部門が直面する課題

1. 現場からの情報共有の遅れ

追加工事や進捗状況が事務部門にタイムリーに伝わらないため、請求漏れや資金繰り予測の不備が発生します。この結果、経営判断に必要なデータが揃わず、戦略的な意思決定が遅れることがあります。

2. 会計と現場管理の分離運用

建設業会計特有の科目(未成工事支出金、完成工事未収入金など)処理を含む経理は、現場管理と連携して初めて適切な運用が可能です。しかし、多くの企業ではこれらが別々に運用され、非効率が生じています。

3. 日々の記録管理の不備

日報や電話指示の記録が曖昧な場合、事務部門が正確な支払い処理や原価管理を行うことが困難になります。特に、ファックスや口頭での指示が時系列で記録されていないケースでは、トラブルが起きやすくなります。

4. 売掛金回収の遅延

請求書の発行が遅れたり、未成工事支出金が正しく処理されなかったりすると、売掛金回収が遅れる要因となります。資金繰りの悪化を招き、現場運営にも影響が出る可能性があります。

5. システム導入のハードル

業務管理・原価管理システムを導入して合理化すればいいではないか、という声が上がって当然ではありますが、問題はそれほど単純ではありません。多額の投資をして導入した新システムを使いこなして業務の合理化・高度化に成功した中小建設業は意外に少ないのではないでしょうか。

そもそも人材不足が業務の停滞や機能不全を引き起こしているのに、そこに新システムを導入しようとすれば、一時的に従前の業務の進め方を維持しながら新システムへのデータ入力をするような事態が起こり、業務は一層混乱してしまいます。どうやってスムーズに新システムへの移行を進めるかについてベンダーから丁寧なサポートがなされた例もあまり聞きません(新システムの使い方と新システムへの移行をどう進めるかは、次元の異なる問題です)。

インストラクターに何度か指導を受けたからといって、従業員みんなが理解習熟できるわけもありません。スムーズに新システム移行が進むようなら、既存のやり方で(いささか非効率ではあっても)業務の機能不全はなかったはずです。

要するに、その会社が上手くいっていない・できない事柄には、その会社なりの上手くいかない理由、できない理由があるということです。他社の成功事例があるから当社も…というのは少し乱暴な気がします。


解決策:現場と事務部門をつなぐ具体的な取り組み

1. 情報共有の仕組みを整備する

現場で発生した追加工事や進捗状況をリアルタイムで事務部門に共有する仕組みを構築しましょう。たとえば、共有フォルダを活用した情報共有は、現場と事務部門の連携を強化するうえで非常に有効な方法です。ただし、その効果を最大化するには、適切な仕組みづくりと運用ルールの徹底、そのための習慣づけが欠かせません。中小建設業においては、シンプルで実行可能なツールやフローを導入することが現実的であり、企業全体の生産性向上につながります。

2. 会計と現場管理の連携を強化する

工事ごとの原価を管理するため、会計システムと現場管理システムを統合することが理想ですが、まずはExcelや簡易的なツールを使って、できるところからデータの一元管理を始めると良いでしょう。

3. 日報管理を徹底する

現場作業員の日報を事務部門が即座に確認できる仕組みを導入することで、労務費や進捗状況の把握が容易になります。特にクラウドベースの共有フォルダやアプリを活用すると、業務の効率化が期待できます。

4. 定期的なミーティングを実施する

現場責任者と事務部門の担当者が定期的に顔を合わせ、現状の課題や改善策について話し合う場を設けることが重要です。このような対話を通じて、相互理解が深まり、連携がスムーズになります。

たとえば、工事の進捗や完了予定が不明瞭なために資金繰り予測が立てにくい、あるいは不正確になる、といった問題がある場合、逆に経理部門から「今月の出来高がどうならないと来月の支払いに支障が出る」といった要請があれば、現場としても意識づけになります。

5. 売掛金管理を徹底する

請求書の発行スピードを上げるため、事務部門で締め日と支払い条件を管理しやすい仕組みを整えましょう。また、売掛金の内容を定期的に確認することで、未回収リスクを最小化することができます。


なぜ「つながり」が生むのか:シナジーの効果

現場と事務部門が連携を強化することで得られる効果は、単なる効率化にとどまりません。それは「全社一丸となった経営」の基盤を築くことにつながります。

現場と事務は不即不離に結びついていて、粗利率アップは現場だけでは達成できないし、資金繰り予測も経理だけではできない。従業員にそうした意識を浸透させることが大切です。また、従業員全体が自分たちの役割が企業の成功に直結していることを実感することで、モチベーション向上にもつながります。


おわりに:次回予告

現場改善において、事務部門とのつながりを強化することが、いかに重要であるかをお伝えしました。次回は、具体的な成功事例をもとに、現場改善がどのように利益に直結するかについて詳しく解説します。

現場と事務部門の連携が生むシナジーの可能性を、ぜひ皆さんの企業でも実現していただきたいと思います。