KPIに着目するだけでここまで変わる!経営事項審査を本質から改善する方法

中小建設業専門の経営コンサルタント長野研一です。年頭にご案内いたしました通り、今月から、毎月第二週は、経営事項審査(経審)をテーマに綴っていきます。

経営事項審査におけるP点とY点の関係

経営事項審査(以下、経審)は、建設業者が公共工事を受注する際に必要な評価基準です。この中で、P点(経営規模等評価点数)は企業の総合的な力を示す指標であり、Y点(経営状況評点)はP点を構成するきわめて重要な要素です。具体的には、Y点は企業の財務状況を数値化したもので、収益性、安全性、効率性、成長性の4つの要素から算出されます。

Y点が高ければ、財務基盤が健全であり、企業が安定して公共工事を遂行できる能力があると評価されます。一方で、Y点を改善しようとして表面的なテクニックに走ると、企業の本質的な成長や競争力向上にはつながりません。長野研一は、この課題を解決するために、小手先の対策ではなく、財務体質を本質的に改善する正攻法を重視しています。本稿では、経審のY点に焦点を当て、KPI(重要業績評価指標)を活用してY点を改善する方法について詳しくお話しします。


Y点とは何か?企業の現在地を知るための指標

Y点は、企業の財務状況を数値化した指標で、建設業における経審の評価の中でも特に重要な位置を占めます。この指標は次の4つの財務要素を基に算出されます。

  1. 収益性(売上高経常利益率)

    • 営業活動がどれだけ効率よく利益を生んでいるかを示します。

  2. 安全性(自己資本比率)

    • 財務基盤の安定性を測る指標で、企業が借入にどれだけ依存しているかを評価します。

  3. 効率性(総資本回転率)

    • 企業が資産をどれだけ効率的に活用しているかを示します。

  4. 成長性(営業キャッシュフロー対売上高比率)

    • 企業の成長の持続可能性を示し、売上に対してどれだけ現金収支が安定しているかを評価します。

これらの要素を基に、経営状況分析機関がY点を算出します。Y点は企業の「現在地」を客観的に示す指標であり、過去の経営成果を振り返り、未来を描くためのツールでもあります。


なぜKPIがY点改善の鍵となるのか

Y点を改善しようとしても、Y点そのものを直接コントロールすることはできません。なぜなら、Y点は結果に過ぎず、その背後にある「原因」や「プロセス」を改善しなければ持続的な向上は望めないからです。この原因やプロセスの改善を具体的な日々の行動に結びつけるのがKPIです。

KPIとは何か?

KPI(重要業績評価指標)は、企業の目標達成の進捗を測る指標です。例えば、「売上高経常利益率」を改善するためには、たとえば営業部門では「顧客ランク別の接触頻度」、工務部門では「実行予算達成率」といったKPIを設定します。このように、KPIは従業員の日常業務行動と企業全体の目標を結びつける役割を果たします。

KPIとY点の関係

Y点の構成要素(収益性、安全性、効率性、成長性)を改善するために、それぞれに対応するKPIを設定します。

Y点構成要素KPI例行動例
収益性工事別実績粗利率工事歩掛の分析改善、低利益工事分野からの撤退
安全性売掛金回収期間請求書発行後に速やかなフォローアップを徹底
効率性労働生産性現場での無駄工数を削減し、進捗を可視化
成長性新規顧客獲得数新規訪問目標を設定し、営業活動を活性化

これらのKPIを定期的にモニタリングし、改善に取り組むことで、結果としてY点が向上します。

上記では、「工事別実績粗利率」といったおおまかな表現にとどめていますが、できるかぎり率や回数で観測可能な具体的行動をKPIとすることがもっとも効果的です。たとえば、「工事別実績粗利率30%」ではなく、「工事案件別の完成工事原価の分析検討100%」かつ「工事案件別の完成工事粗利率30%の達成割合8割」という指標の方がよりリアルで、実務に即したものになりやすいというわけです。

営業部門においても同様です。「受注金額」という結果はコントロールできませんが、「お得意先にお送りする月刊ニュースレターを前月末までに作成」「攻略目標先3社の月1回訪問」という行動はKPIとしてコントロール可能です。ニュースレターを毎月持参すれば受注金額が必ず増えるとは必ずしもいえないでしょう。しかしながら、日々の行動の積み重ねの先にしか結果はついてきません。その「日々の行動の積み重ね」をコントロールするのがKPIなのです。


長野研一が提案する正攻法:財務体質を改善しY点を向上させる方法

Y点の改善は、小手先のテクニックではなく、企業の財務体質を本質的に強化するアプローチで進めるべきです。以下に、長野研一が実践する正攻法をご紹介します。

1. 現状分析:Y点の構成要素を可視化する

まず、Y点のスコアを分解し、それぞれの構成要素がどのような状態にあるのかを把握します。この分析を基に、改善の優先順位を決定します。

2. KPI設定:現場でコントロール可能な指標を明確にする

収益性、安全性、効率性、成長性ごとに、現場で実行可能なKPIを設定します。これにより、従業員が自分の業務がY点にどう影響するかを理解できるようになります。

3. PDCAサイクルを回す:改善を継続する仕組みづくり

  • Plan(計画): できるかぎり具体的で率や回数で観測可能なKPIを策定します。

  • Do(実行): 週次、月次の業務に落とし込み、実行します。

  • Check(評価): KPIの達成度を定期的(2ヵ月毎が目途)に確認します。

  • Act(改善): 結果を基に次の行動を決め、必要に応じて行動を修正します。

4. 成果を可視化:成功体験を共有する

Y点の向上につながったKPI改善の成果を、全社員で共有します。これにより、従業員が自分の努力が会社全体に貢献していることを実感できます。


経審を未来志向のツールとして活用する

経審は単なるスコアリングではなく、企業の過去を振り返り、未来を描くためのツールでもあります。Y点の向上を目指すプロセスを通じて、企業の財務体質を強化し、競争力を高めることができます。

長野研一は、Y点を「現在地」を知るための指標とし、KPIを「改善の道しるべ」として活用することを提案します。経審を通じて、自社の課題を明確化し、それを克服するための行動を積み重ねることで、公共工事での競争力を高めるだけでなく、持続可能な成長を実現しましょう。


まとめ:KPIを武器に本質からY点を改善する

  • Y点は結果であり、KPIはプロセスです。

  • コントロール可能なKPIを通じて、従業員の日常行動がY点に影響を与える仕組みを作りましょう。

  • 経審を等級を上げるための数字合わせとしてではなく、自社の未来を描くためのツールとして活用してください。

小手先のテクニックに頼らず、財務体質を改善する正攻法で、Y点を本質的に向上させていきましょう。それが、結果的には企業の競争力を高める最短ルートです。