幸せな後継者にするために〜後継者の未来を拓く事業承継の秘訣〜

はじめに:跡継ぎへの親心と葛藤

跡継ぎが家業に戻る決断をしたとき、親としてこれほど嬉しいことはないでしょう。しかし、親心は単純ではありません。
「本当にこの選択が子どもの幸せにつながるのか」
「子どもの可能性を広げることができるのか」
「逆に未来の芽を摘んでしまうことにならないか」
そんな思いが頭をよぎるのが親というものです。

実際、後継者が事業を承継する過程には、さまざまな課題や葛藤が存在します。しかし、このプロセスを通じて後継者が自ら未来を切り開き、家業を通じて自身の幸せを実現できるようになることが重要です。本ブログでは「幸せな後継者」を育むために必要な考え方と実践的アプローチを解説します。

幸せな後継者とは何か

1. 自ら選択し、自分の未来を切り開く後継者

後継者が幸せであるためには、まず自分の意思で家業を選択していることが重要です。親からの期待だけでなく、自らの価値観やビジョンに基づいて家業に向き合うことで、経営者としての責任を主体的に引き受けることができます。

2. 可能性を広げる未来視点を持つ

「家業を引き継ぐ」とは、単に親からバトンを受け取るだけではありません。自分の可能性を広げ、事業を次のステージへと成長させる視点が必要です。この視点を育むためには、現状を超えた「理想の未来」を描く能力が不可欠です。

3. 家業を通じて自分自身の幸せを実現する

家業は後継者の自己実現の舞台でもあります。経営者としての挑戦や成功を通じて、社会や従業員、そして家族に対して価値を生み出すことが、後継者自身の幸福感にもつながります。

親ができる3つの支援

1. 家業の本質を問い直す「事業定義」の重要性

「事業定義」とは、自らの事業とは何かを明確にすることです。言い換えれば「うちは何屋か」を決めることです。とりわけ、事業環境の変化が大きい現代においては、単なる製品中心の事業定義(○○を作って売る)を超え、利害関係者-機能-技術という3次元で捉えることが重要です。すなわち、ある利害関係者を念頭に、ある機能を果たすため、ある技術の応用を提供するという形です。

既存の事業と異なるコンテクスト(文脈)で事業を捉え直すことで、現状に引きずられることなく、新たな可能性を発見することができます。後継者が家業の本質を再定義することで、自らの意思と視点で未来を描くきっかけが生まれます。

とはいえ、本業一辺倒では斬新な事業定義も生まれにくいもの。ダブルキャリアを志向することで、後継者のもうひとつの未来の可能性の芽を残すと同時に、結果として視野が広がることが事業定義の視座を上げ、ひいては本業の未来を拓くことにつながる可能性もあるかもしれません。

2. 「未来視点」を共有する親子間セッション

経営は車の運転に例えられます。近くだけを見ていても、遠くだけを見ていても運転はうまくいきません。10年先の家業の理想像を親子で共有し、フォアキャストではなくバックキャストの手法で計画を描くことが大切です。

実践例:

  • 10年後の理想的な事業像を描き、イメージコラージュにしてみる。
  • 制約要因をリストアップし、それを解決するための行動計画を検討する。

3. 後継者の個性を尊重し、成長を支援する

後継者が「理想の経営者」へと成長するためには、個々の強みや価値観を尊重することが重要です。家業を通じて自己実現を果たすことができれば、後継者は自信を持って次世代のリーダーシップを発揮できるようになります。

実践例:

  • 成長過程を可視化する「個人成長ロードマップ」を作成する。

幸せな後継者になるための後継者自身の心得

1. 現状を超える「ブレイクスルー思考」を持つ

10年先の経営目標を掲げるに際し、自社を現状とりまくさまざまな制約要因を念頭に置けば、現状の延長線上にしか目標を描けないのも無理もないことです。

しかし私は、10年先の経営目標について「理想の未来を掲げればそれでよいのです。要は『現在の延長線上に理想の未来はない』(すなわちブレイクスルーが必要)ことに気付くことが大切なのです」と申し上げることにしている。

この認識がきっと新たなチャレンジや成長のきっかけになります。

2. 家業の枠を超えて広い視野を持つ

事業承継にあたっては、業界の動向や他社の成功事例を学び、広い視野で物事を考える力を養うことが求められます。

3. 自分自身の幸福感を意識する

家業の承継が、後継者自身の価値観や幸福感に一致しているかどうかを見極めることが大切です。無理なく自己実現を追求できる環境づくりが、幸せな後継者への道を開きます。

おわりに:未来を切り開くために

後継者が家業を承継することは、一つの挑戦であり、成長のチャンスでもあります。親としてできること、後継者自身が意識すべきことを明確にし、双方が協力して理想の未来を描くことが重要です。

そして、私が声を大にして言い続けたいのは、「けっして自分たちだけでやろうとしないで」ということです。かくいう私自身、人に教えを受けたり、人がやっていることを真似したりするのは恥ずかしいことで、オリジナルを追求するのが当たり前だと思っていました。それで成果が出るのならそれでもいいわけですが、思ったような成果も出ませんでした。そんな私も謙虚な気持ちで人に教えを乞い頼ることで(もっと正確に言うと、自分とは違った考えに触れ、自分の実践に対して他人の評価を仰ぎ、考えながら行動を修正することで)仕事の仕方はもちろん、人生観すら変わりました。というより、人生観が変わったからこそ人に教えを乞えるようになったようにも思えます。何より大きな収穫は、「自分が何によって誰に貢献すればいいか」が見つかったことです。

「幸せな後継者づくり」は、家業の繁栄と後継者の幸福を両立させる取り組みです。ぜひこのブログをきっかけに、あなたの家業と後継者の未来を見つめ直してみてください。