はじめに:支援者としての役割を見つめ直す場
先日、私は「中小企業支援機関情報交換会」に参加し、税理士や経営コンサルタント、金融機関の経営支援部門の責任者といった多くの支援者の方々らと経営者支援について意見を交換する機会を得ました。また、その中で「誰にどのような貢献をするかを決めていますか?」と題して事例発表もさせていただきました。
発表の内容:「誰に、どう貢献するか」を考えることの大切さ
私の事例発表は、「誰にどんな貢献をするのかを決めていますか?」と問いかけるものでした。支援者は専門知識を提供するだけでなく、経営者の悩みや目標に寄り添った支援が求められているという思いを込めました。そうすることではじめて経営者に本当の変化をもたらすことができるとの考えからです。
いただいた感想:発表がどのように受け取られたか
発表後の交流会などで、参加者の皆様から多くの感想をいただき、自分の発表内容がどのように受け取られたかを知ることができました。
あるベテランの税理士の先生は、私が2年前に別の場所で話した内容を覚えてくださっており、「あなたの話にはインパクトがあるね」とおっしゃっていただきました。さらにご自身の目指す経営助言の形についてもお話しいただき、私も多くを学ぶ機会となりました。
「心の中でめちゃくちゃうなづきながら聞いていました」とおっしゃってくださった方もおり、自身の思いと重ね合わせて聞いていただけたことに感謝しています。
また、「長野さんがおっしゃる通り、知識が経営者に寄り添う邪魔になることもあるんですよね」と言ってくださった方もいました。この方は、知識やスキルが豊富な人が意外に経営支援の成果を挙げられていない例について話してくださいました。
さらに「専門家が多く参加する会合で、よくぞ言いにくいことを言ってくださいましたね」とおっしゃった方もおり、率直に問題提起したことが評価されたことを嬉しく思いました。あくまで私自身の問題意識と取り組み例をお話ししただけで、それを正解だというつもりも、一般化するつもりもありませんでしたが、参加者の皆様が建設的な視点でとらえてくださったことは、私にとって大きな励みとなりました。
支援者として大切にしたいこと
今回の発表で伝えたかったのは「私たちは知識に重きを置きすぎていないか」ということです。
「知識が経営者に寄り添う邪魔になることがある」という視点は、私自身の経験から生まれたものです。支援者が知識やスキルに囚われすぎると、経営者の本当の悩みに気づけないことがあるとの反省から出たものです。真の支援をするためには、知識を一歩引いて、経営者の声に耳を傾ける姿勢が必要だと痛切に感じたからこそ、この場でお伝えすべきだと思った次第です。
発表を通して学んだこと
今回の会合では、自分が支援者としてどのように貢献できるのかを再確認する機会となりました。「誰に」「何を」「どのように」支援するかを明確にすることで、支援がより的確で価値あるものになります。支援者として、知識やスキルを磨くだけでなく、相手に寄り添い、根本的な問題に目を向けるための「聞く力」を高めることが、私たちが目指すべき姿であると思います。
TKCの税理士の先生方が目指しておられる「月次巡回監査(毎月の帳簿チェック)を基本に、会計帳簿の精緻化と正確性を図り、そこから経営助言を行う」という役割についても理解することができました。私自身の立場や視点とは異なるものの、きわめて重要な役割です。このように言語化された役割こそが、私が発表で問いかけた「誰に、どう貢献するのか決めていますか?」の回答だと感じました。
それぞれの支援者が、それぞれの立場で、それぞれの貢献をすることこそが中小企業の未来につながるものと確信しています。