はじめに:挑戦し続ける経営者の姿勢から学ぶ
昨日、建設業の新しいお客様と初めての面談を行いました。その社長様は、まさに立志伝中の人物なのですが、初対面にもかかわらず、自分自身が感じる経営者としての限界から社内人事の悩みまで、率直に語ってくださいました。
彼の言葉には、現状に甘んじず、挑戦を続けることの大切さが溢れていました。「たとえ優良企業であっても挑戦することをやめたらどうなるか」と、身近な事例を交えながら語られ、「だから当社は挑戦し続けたい」と力強くおっしゃる姿が非常に印象的でした。
この面談を通じて強く感じたのは、どんなに成功している企業であっても、現状維持にとどまることの危険性を自覚している経営者は、常に次の一手を考え、挑戦を続けているということです。そして、それは「迷宮に迷い込んでいることを自覚する」ことから始まるのです。現状に満足せず、自分がどのような課題を抱えているのかを認識しない限り、迷宮から抜け出すことはできません。
本記事では、この「気づき」の重要性と、迷宮から抜け出すための具体的なステップについて、さらに深掘りしていきます。
- 自分が迷宮にいることを認識する
「問題がある」とは誰もが感じるものですが、それが「迷宮」であることを認識するのは簡単ではありません。迷宮とは、挑戦を止め、現状維持に甘んじている状態そのものです。気づかなければ、現状が最適と錯覚してしまい、さらなる改善の糸口を見つけることができません。
経営者が抱える課題は、日常の業務に忙殺される中で、問題を直視することを避けてしまうことにあります。例えば、業績が伸び悩む原因を外部環境のせいにしてしまう、社員のやる気が低下しているのは個人の問題だと決めつけるなど、自分自身の迷宮を直視しない姿勢が目立ちます。このような状況を脱するには、自らの思考パターンや行動パターンを疑う勇気が必要です。
- 業界常識を疑うことが迷宮からの脱出への第一歩
多くの経営者は、業界の常識に縛られた考え方から抜け出せずにいます。確かに、業界常識は長い歴史の中で築かれた成功の方程式ですが、それが現在も通用するかは別問題です。業界常識に固執している限り、業績が向上することは期待できません。それどころか、時代の変化に取り残されるリスクが増すばかりです。
アインシュタインの名言に「問題は発生したのと、同じ次元では解決できない」という言葉があります。つまり、これまでと同じ考え方や手法では、現状の問題を解決することはできません。新しい視点を持つためには、業界常識を疑い、異業種の成功事例や新たなアプローチを積極的に取り入れる必要があります。
- 発想の転換が迷宮を突破するカギ
迷宮を脱するには、自らの発想を転換する必要があります。しかし、これは言うほど簡単ではありません。現状の延長線上でしか考えられないという壁にぶつかりがちです。これを打破するには、まず自分自身の成功や失敗のパターンを冷静に分析し、そこから新たなアクションを引き出すことが重要です。
例えば、「どのような時にどのような取引が始まったのか」「なぜその取引がうまくいったのか」を深掘りしていくことで、現状打破のヒントが見つかることがあります。うまくいっていない部分ばかりに焦点を当ててしまうと、袋小路に陥りがちです。成功事例に目を向け、積極的なマインドセットにシフトすることで、未来を切り開く手がかりが見つかるでしょう。
- 価値観と優先順位を再確認する
迷宮に迷い込む背景には、自分の価値観や目標が不明確であることがあります。自分が本当に大切にしているものが何かを決められなければ、優先順位が曖昧になり、結果として行動がちぐはぐになります。バックキャスティング(ゴールから逆算して計画を立てる方法)を活用し、「どうなりたいか」を明確にすることが迷宮脱出の第一歩です。
「フォアキャスト(未来を予測して計画を立てる方法)」では、現状の延長線上でしか目標を設定できず、結果的に目標が小さくまとまってしまいます。これに対し、バックキャスティングは理想の状態から現在を見直すため、大胆な目標設定が可能になります。経営者としての価値観をはっきりさせ、目標を設定することで、具体的な行動が導き出されるのです。
- 他者の力を借りて視点を変える
迷宮から抜け出すためには、他者の視点を取り入れることも重要です。時に、自分一人では気づけない問題や改善点が、第三者の目を通して明らかになることがあります。特に、外部の専門家やコンサルタントの助言は、新たな視点を提供し、経営者自身が見落としている部分に気づかせてくれます。
「まずは自分でやってみる」と考える方が多いですが、それで解決できていれば問題にはなっていません。外部の意見やサポートを受け入れ、他者の力を借りることが、思わぬ突破口となることがあります。自分の思考や行動に他者の視点を取り入れることで、迷宮から抜け出す道筋が見えてくるのです。
まとめ:迷宮を抜け出すために必要なこと
経営者が迷宮から抜け出すためには、まず自分が迷宮に迷い込んでいることを自覚することが必要です。そして、業界常識にとらわれない発想の転換、価値観の明確化、そして他者の力を借りることで、新たな道が開けます。迷宮は必ずしも外部のせいではなく、自らが作り出していることも多いのです。だからこそ、自分自身と向き合い、迷宮からの脱出を果たす勇気と行動が求められます。
最後に、迷宮に気づき、そこから抜け出すための第一歩を踏み出すことが、経営者としての新たな成長と挑戦につながるのだと信じます。多くの方は内心、自分自身の課題に本当は気づいているのです。にもかかわらず真相に迫りたくない心理が働くのは、本当の目標が見つかっていないからだと思います。