言語化の威力 – 価値観を共有し、行動を促すカギ

はじめに:言語化の重要性とは

経営において、言語化の力はしばしば見過ごされがちです。しかし、成功を収める企業の多くは、組織内での共通認識を確立するために、言葉を定義し、共有しています。この「言語化」が、企業の成長や強みの引き出しにおいて重要な役割を果たします。

私が中小建設業の経営者の方々に日ごろお伝えしているのは、ビジネスにおいて言葉の力をもっと活用してほしいということです。具体的には、従業員が同じ価値観を持ち、共通の方向を向いて業務に取り組むための「言語化」がカギとなります。共通の価値観を言語化することは、ただの意思疎通を超え、組織の力を最大限に引き出すための強力なツールとなります。

言語化の役割 – 「どう伝えるか」よりも「何を伝えるか」

多くの経営者や営業担当者は、売上を伸ばすために「どうPRすればいいか」「どうやって商品を売り込めばいいか」に焦点を当てます。しかし、最も重要なのは、その前提となる「何を伝えるか」です。どれだけ効果的な手法を駆使しても、伝える内容が不明確であれば、顧客には響きません。

要は、「ノウハウ(How)」よりも「ノウワット(What)」が決定的に重要だということです。つまり、経営行動の全てはまず「何をやるか」を明確にすることが先で、「どうやるか」はそのあとの問題です。顧客が商品を購入する理由は、伝え方が巧みだからではなく、その商品に「欲しい」と思う要素があるからにほかなりません。

言語化のプロセス – アイデアを具体化する

言語化とは、単に言葉を発することではなく、アイデアや概念を明確な言葉に置き換えるプロセスです。このプロセスには多くのメリットがあります。

まず、アイデアや目標を言葉にすることで、それらが具体的かつ明確になります。曖昧なままのアイデアでは実現が難しいですが、言葉にすることで具体的な行動計画が立てやすくなります。

言語化によるコミュニケーションの向上

ビジネス環境では、プロジェクトの進捗やチームワークを円滑に進めるために、明確でクリアなコミュニケーションが求められます。言語化は、意思疎通の改善に大きな影響を与えます。具体的でわかりやすい言葉を使うことで、他者との誤解が少なくなり、スムーズな連携が可能になります。結果として、プロジェクトの成功率が上がり、チームの士気も高まります。

さらに、言語化は問題解決の手助けにもなります。問題を言葉にすることで、その本質や原因が明らかになり、対策を講じやすくなります。例えば、経営者が「売上が伸びない」という問題に直面した際、まずその原因を具体的な言葉で表現することが必要です。それが「市場ニーズの変化に対応できていない」や「商品の価値を適切に伝えられていない」といった形で明確になることで、適切な対策が見つかるのです。

言語化と自己理解 – 自分を整理する

言語化は自己理解にも大いに役立ちます。自分の考えや感情を言葉にすることで、それらが整理され、自己認識が深まります。これは、自己成長や目標達成において不可欠な要素です。経営者自身が、自分の価値観やビジョンを言葉にすることで、組織全体が同じ方向に向かって進むことが可能になります。

この自己理解は、ビジネスだけでなく、日常生活にも役立ちます。例えば、家族や友人との関係を強化するためにも、相手の考えや感情を適切に言葉にすることが重要です。

行動を促すための言語化

ビジネスにおいて、顧客や従業員に行動を促すための言葉を選ぶことが重要です。しかし、多くの場合、具体的な行動を定義する言葉が不足しているために、行動が促されないことがあります。

例えば、経営者が「ニーズを喚起しよう」という目標を掲げても、そもそも「ニーズ」が何を意味するのかが曖昧であれば、誰も行動に移せません。ここで重要なのは、ニーズを「問題を解決したいという意欲」と定義することです。さらに、その問題とは「理想と現実のギャップ」であると定義すると、ギャップを相手に伝えることこそがニーズを喚起することと言うことになり、行動の指針が明確になります。(注)

ナンバーワンを目指すための言語化 – 自社の強みを引き出す

最後に、言語化の力を使って、顧客に選ばれる理由を作りましょう。それは、自社の肩書やネーミング、キャッチフレーズを適切に言語化することから始まります。

例えば、顧客ターゲットが明確であれば、それに合ったキャッチフレーズも自ずと明確になります。ニッチな市場に絞り込み、その中で「ナンバーワン」を宣言することで、自社の強みを前面に押し出し、顧客に対して一貫したメッセージを発信することができます。

勝手に枠組みを作り、その中でのナンバーワンを目指す。これこそが、言語化の力を最大限に活用し、自社の成功につなげる方法です。

まとめ:言語化の威力を実感しよう

言語化は、単なるコミュニケーションの手段にとどまらず、ビジネスや自己成長のための強力なツールです。言葉を通じて、目標を明確にし、問題を解決し、自己理解を深めることができます。さらに、適切な言葉を使って行動を促し、顧客に選ばれる理由を作り出すことができるのです。

このブログを通じて、皆さんが言語化の力を理解し、日常の業務や生活に活用していただけることを願っています。

(注)では、そのギャップをどのように伝えれば良いか。それを直接的に伝えるのは、あまりうまいやり方ではありません。感情的な反応が返ってきやすいからです。どういうことかというと、関係性が不十分な人は、直接的な伝え方をされると、相手にコントロールされようとしている、攻撃されていると受け止めるからです。ですから、伝え方にはちょっとした工夫が必要なんです。それを私と一緒に考えていきませんか?