はじめに：なぜ「寄り添うこと」が重要なのか？
日本経済新聞の土曜版に掲載される「なやみのとびら」は、私が欠かさず読んでいる人生相談コーナー。さまざまな悩みを抱える読者に向けて、回答者が真摯に応える姿勢に感銘を受けています。特に、俳優の平岳大さんのアドバイスには、相談者に寄り添う優しさがひときわ感じられます。「僕もこんな失敗をしたけれど…」と、自らの苦い経験を交えて共感しながら答える姿勢が際立っており、人の痛みを理解する人間味が伝わってきます。
これに対して、他紙の人生相談の中には、相談者を糾弾して正義の鉄槌を下すケースも見られます。この違いは、「誰に向けたアドバイスか」に起因するのです。相談者に寄り添い、彼らの問題を一緒に解決しようとするのか、それとも読者に向けて痛快な答えを提示するためのものなのか。
コンサルタントとしても、同様の選択を迫られることがあります。お客様の問題に対して寄り添い、共に解決を目指す姿勢を貫くのか、それとも単に自論を押しつけ、結果的にお客様を置き去りにするのか。この違いこそが、成功するコンサルティングと、失敗するコンサルティングの分かれ道なのです。
正しい答えではなく、行動を促すことが目的
私たちコンサルタントが行うべきは、お客様に「正しい答え」を押し付けることではありません。重要なのは、お客様が自らの力で次のステップを踏み出すように促すことです。たとえば、金融支援に消極的な金融機関の悪口を言うだけでは、お客様の問題は解決しません。そうした状況を共に乗り越えるための具体的な行動を提案し、お客様が次に進むための道筋を一緒に描くことが肝要です。
「寄り添う」とは、お客様の可能性を信じ、一緒に考え、具体的な行動を共に起こすことに他なりません。これこそが、お客様の成長と成功を支援するための真のコンサルティングの姿勢だと考えています。
現場に根ざしたコンサルティングメニューの構築
弊社のウェブサイトをご覧いただければ、きわめて実務的で、実際の現場に即したサポートメニューが用意されていることに気づかれるでしょう。私たちは、経営理念や戦略の大切さを無視しているわけではありません。しかし、原理原則を唱えるだけで現実の課題が解決するわけではないことも理解しています。
私たちがまず取り組むのは、お客様がすでに持っている隠れた強みを明らかにすることです。そして、その強みを基に、目の前の課題を解決しつつ、将来の成長につながる種を同時に蒔くスタイルをとっています。これにより、お客様は現実的かつ実行可能なツールを手に入れ、成果を出すことができるのです。
私は「まずは30点主義で始めましょう」という言葉をよく使います。これは、完璧を目指すのではなく、その会社の身の丈にあったやり方で、まずは動き出し、改善を積み重ねていくことが重要だという意味です。特に中小建設業の現場では、計画が完璧でなくても、行動を起こすことで道が開けます。10点の会社が30点になると、経営者も従業員もその効果を必ず実感するものです。
コーチングとコンサルティングの融合
15年にわたるコンサルティング経験の中で、お客様に寄り添い、共に成長していくためには、単なるコンサルティングだけでは不十分と気付かされました。今では、コンサルティングとコーチングをうまく使い分けることで、お客様によりよい気づきと自己成長を促すことができると私は確信しています。
私自身、ここ5年ほどで約700万円を投じて、コーチングスキルを磨いてきました。それは単なる知識習得ではなく、コーチングの効果を自分自身で体感し、その価値を実感するための取り組みでした。その結果、傾聴力や質問力、そしてお客様を承認する力が格段に向上したことを感じます。
コーチングの技術を取り入れることで、お客様は自ら考え、行動を起こす力を養うことができます。これは、私たちコンサルタントが一方的にアドバイスを与えるよりも、はるかに持続可能で効果的なアプローチです。
実務的なサポートの力
中小建設業の経営者が求めているのは、立派な経営計画書を作ることではありません。彼らが本当に必要としているのは、計画が実際に現場で動き出し、目に見える成果を生むことです。これを実現するためには、社長のみならず、幹部職員や従業員と一緒に汗をかきながら取り組む必要があります。
戦略論を語るだけではなく、現場での具体的な行動をサポートすることが、私たちコンサルタントの本当の役割だと考えています。中小建設業のお客様と共に歩むことは、確かに華やかなことではないかもしれません。しかし、そのリアルさとやりがいこそが、私たちの仕事の価値を高めているのです。
結び：お客様の未来を共に築く
コンサルティングとは、単に正しい答えを提供するだけではなく、お客様と共に未来を築くプロセスです。お客様に寄り添い、その成長を支援するために、私たちは常に現場に根ざし、具体的な行動を促すことに注力しています。
お客様の強みを引き出し、共に成果を生み出すことこそが、私たちの使命であり、喜びでもあります。これからも、中小建設業の経営者と共に歩み続け、現場での成功をサポートしていきたいと思います。