問われる「教える側の業務理解度」
『よく「芸を盗む」とかいうが、あれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要だ。時間がかかるんだ。教える方に論理力がないから、そういういいかげんなことを言うんだ。』(立川談志)
OJTにも、そんな一面があるのではないでしょうか。
見方を変えれば、OJTというのは教える側の業務理解度が問われているのだと思います。
実行予算書の作り方を教えるとき、「こういう内容を書いておけば、これまでケチがついたことはなかった」と教えるのか、「実行予算書の狙いはこうだから、こう行動すべき」と教えるのか。その差は大きいですよね。
OJTに欠けているもの
ご存じの通り、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とは、仕事の現場で実際の業務を通じて従業員が必要なスキルや知識を身につけていく研修方法のことを指します。一般的には、新人教育の一環として行われることが多いですね。
OJTの問題点として一般に挙げられるのは、以下のような点です。
- 組織や上司の教育スキルの差:OJTを行う上司やトレーナーによって、教育内容や方法が異なる場合がある。これにより、従業員が不適切な指導を受ける可能性がないとはいえない。
- 行程や業務に関する教育の不足:OJTでは、実際の業務に焦点を当てた研修が行われるため、必要な理論や背景知識が不足していることがあり得る。このため、従業員が業務の全体像を理解できないままになりかねない。
- タイミングや環境の制約:OJTは実務を通じて学ぶため、業務の忙しさや環境によっては充分な教育が受けられないことがある。
でも、これを新人の視点からみると、別の問題点が浮かび上がってきます。
4.新人は現場に行くまで一連の仕事の中でどこからどこまでを担当するのか、具体的なタスクがわからない。現場から帰った後も、自らとったノートを見返す以外に学んだことの振り返りができない。
5.個別のタスクについて、どこまでできたら及第点なのかのレベル感がわからない(到達すべきレベルが見えにくい)。
さらに、これを応募者の視点でみると、もっと別の問題点が浮上してきます。
6.教育訓練の仕組みがきちんとしている建設会社なのか不安
7.自分がこの会社でちゃんとやっていけそうか不安
事前にOff-JTでレクチャーしているから、当社には業務マニュアルがあるから…といった声も聞こえてきそうです。それで教育訓練がうまくいっているならそれでよいと思います。しかし、効果的、効率的な教育訓練、さらには募集採用まで視野に入れている企業様の中には、少し違った行き方をしておられるところもあります。
業務チェックリストが補うOJTの弱点
こうしたOJTの問題点は、業務チェックリストを作成することで以下のように解消することができます。
- トレーニングの漏れを防止:業務チェックリストには、従業員が行うべきタスクや手順が詳細に記載されており、トレーニング中に漏れることが少なくなります。従業員はチェックリストを参照しながら作業を行うため、必要なスキルや知識を網羅的に身につけることができるというわけです。
- ミスの発見と修正:業務チェックリストには、作業の各ステップやチェックポイントが明記されており、従業員自身が作業を進める際にミスを発見しやすくなります。また、チェックリストに基づいて指導者や上司が監視・確認作業を行うことで、ミスを早期に発見して修正することができます。
- 成果の確認と評価:業務チェックリストを使用することで、従業員の作業進捗や成果を具体的に把握することが可能となります。上司や指導者はチェックリストを参照して、従業員の業務遂行状況を評価しやすくなります。
- ルーチン業務の効率化:業務チェックリストを導入することで、従業員が日々の業務を管理しやすくなります。ルーチン業務の手順が明確になることで、従業員は作業を効率的に進めることができるようになります。
- 隙間の埋め合わせ:業務チェックリストには、業務全体の流れが示されているため、従業員が抱えるスキルや知識の隙間を埋めるのに役立ちます。チェックリストを通じて従業員は必要なスキルや知識を補完し、業務全体を包括的に理解することができるようになります。
6.新卒採用パンフレットやリクルートウェブページに「教育訓練に業務チェックリストを導入している」ことを謳うことで、応募者の不安を軽減し、信頼を得ることができます。ひいては採用活動を有利に進めることができるようになります。
業務チェックリストサンプルを見た社長様の反応
業務チェックリストのサンプルをお見せした社長様がたは、おおむね同じような反応をされます。
「これはいいね」「欲しい…だけど、当社の従業員はここまでできていないね」
私はこう申し上げます。「社長、それでいいんですよ。御社なりの及第点のレベルで、御社なりの業務チェックリストを作るのがいちばん役に立つんです」と。